マンハッタン

スタンダードカクテル「マンハッタン」
もう鬼籍に入ってしまった先輩バーテンダーは、このカクテルを好みませんでした。「ニューヨークは、つらいだけだった。」若かりし先輩は、修行の場として、ニューヨークを選び、3年間、酒と英語とスペイン語と闘っていたのです。

そんな先輩と最後に酒を酌み交わした夜、先輩は珍しくマンハッタンを注文しました。「これを飲むと、3年間が幻ではなかった事を知るんだ。」逃げたいのか、逃げたくないのか。忘れたいのか、忘れたくないのか。5年前の自分には理解する事ができませんでした。

「マンハッタン」のネーミングには諸説あり、中でも、イギリスの首相だったウィンストン・チャーチルの母親が「マンハッタン・クラブ」という店でふるまった酒だったからという説が有名ですが、夕日の様な「マンハッタン」の色は、自分にとっては、先輩の横顔のイメージなのです。

カクテルは、出会い方によって、まるであの頃を思い出してしまう「あの曲」の様に、それぞれのイメージを作れるのです。

これから少しずつ、そんなカクテルやお酒達を紹介させて頂くつもりです。少しだけ、おつき合いして頂ければ幸いです。